マーケティング/コンセプト作り
コンセプト作りとは
コンセプト作りは、マーケティングの中でも核心の部分になります。
その商品がどのような顧客向けの物であるのかというスタイルがコンセプトです。
たとえば、車を例に考えましょう。
その車がスポーツカーであり、スタイルの良い車が欲しい人向けの車であるというコンセプトであれば、そのように自分のスタイルを固めたいと考える人がそう
いう車を買います。
その車が家族でドライブすることを目的にした車であるというコンセプトであれば、家族で旅行に行きやすいような車が欲しいと考える人が、そういう車を買い
ます。
もちろん仕事で多くの荷物を運べる車が欲しい人ならそういう車を買うでしょうし、高級感あふれる車が欲しい人であれば、またそういう車を買うでしょう。
狙うべきコンセプトとは
マーケティングの最終目的は売上を向上させることですから、コンセプトを作る時にも売れるコンセプトを作る必要があります。
同じように見えるコンセプトでも、売れるコンセプトと売れないコンセプトがあります。
基本的には、そのコンセプトの商品が欲しいと思う人が多くいればそのコンセプトの商品は多く売ることができ、そのコンセプトの商品が欲しいと思う人が少な
ければ、そのコンセプトの商品はあまり多く売ることができません。
車の例で考えましょう。
たとえば「家族で旅行に行ける車」というコンセプトなら、ターゲットとなる顧客層は車で家族と一緒に旅行する人全員になります。このような人の数は多いで
しょうから、売上も多く見込むことができると言えるでしょう。
一方で、たとえば「一度ガソリンを満タンにしたら、ガソリンスタンドに寄らなくても数千キロを走ることができる車」というコンセプトの車を作ったと
しても、都会にいればこのような車の必要性を感じることは難しいでしょう。都会であればどこにでもガソリンスタンドがあり、ガソリンが少なくなればどこで
でも自由にガソリンの補給ができるからです。郊外を走っていても主要幹線道路の脇にはガソリンスタンドはたくさんあり、あえてわざわざガソリンスタンドに
寄らなくても長距離を走れる車を買わなければならない必要性はありません。よほど僻地の、人口が少なくガソリンスタンドもほとんど無い地域を頻繁に走らな
ければならないような人にとってはこのような車も魅力はあるでしょうが、そのような地域に住む人は都会に住む人の人口の1%もありませんので、売上もその
人口に比例して、都会向けの車の1%以下しか見込めないことになります。売上とは目標の8割にしか届かなくても失敗の部類に属しますので、この売上比1%
以下というのがどれほど絶望的な数字か、おのずと理解できるかと思います。
「ただの注目」が売上にはつながらない理由
しかし現実には、AIDMAの理論を過剰に重視し、広告の注意を引き、興味を引くことを過剰に過大に評価することによって、単に奇をてらっただけの
コンセプト作りをした商品も散見されます。
奇をてらった商品の広告は、広告自体は目をひくかもしれませんが、それで実際に顧客が商品を購入するというものではありません。何と言っても商品を買うと
いうのは、顧客が自分のお金を払わなければならないということなのです。町を歩いていて、ちょっと面白い広告が目に入ったという印象と、実際に自分がお金
を支払わなければならない時に評価する要素は異なるのです。
無料で、気軽に手に入るものであれば、ちょっと目を引く程度のものでも人は手にするかもしれません。何しろ気に入らなければ捨てれば良いだけですから。
しかし実際にお金を払う段階になれば、人はもっと慎重になります。何しろ自分の身銭を切るわけですから、そのお金を払うことによって本当に役に立つもので
なければなりません。
たとえば無料の広告なら、「生活の役には立たないが面白い雑学」という程度の内容でも、多くの人が目を通すかもしれません。中世の生活の知識や、昆虫の生
態の話でも、多くの人が興味深く読もうとするかもしれません。
しかしたとえば、1年間かけて勉強する、100万円くらいの授業料が必要な勉強会のテーマが、「昆虫の生態の話」だとすれば、そのような勉強会にお金を
払って参加したいと考える人は少ないでしょう。
何しろ自分のお金から100万円を払う必要があるのです。仕事に役立つ資格などならともかく、わざわざ「昆虫の生態の話」を知るために、わざわざ100万
円を払いたいと考える人はいないでしょう。
同様に、電車の中の広告に、たとえば「昆虫の雑学」というものを掲載すれば、多くの人が興味を持って読むと思われますが、たとえ無料であっても1年かけて
学ばなければならない「昆虫の雑学」の話であれば、わざわざそのような講習を、長い時間をかけて受けたいと考える人も多くはないでしょう。
これが「ちょっと目を引く物」と、「時間やお金をかけてでも手に入れたい物」の違いです。
マーケティングとは、お金をかけてでも手に入れたいと消費者に思わせる物を提供する手段なのです。お金を払わないのであればちょっと気にかけても良いかな
としか思われない程度の物しか提供できないのであれば、それはマーケティング的には価値がありません。
そして広告の段階で多くの人の目を引くかどうかというコンセプトと、買いたい人だけが気にするコンセプトは異なります。
たとえば「家族で旅行に行く時に良い車」であれば、それほど新味はありませんから電車の広告の中で特に多くの人の目を引くことはないでしょう。しかし車を
そろそろ買い換えたいと考えている人であれば、そのような広告を目にして気に留めやすいと言えます。このような広告がマーケティング的に売上を見込みやす
い広告と言えるのです。
コンセプトの競合
ある特定のコンセプトを打ち出した時、ライバル会社のコンセプトと競合することは、よくあります。
「家族で旅行に行く時に良い車」というコンセプトの車なら、そういう車を欲しがる顧客は多いかもしれませんが、ライバル会社も同様のコンセプトの車を多数
販売しているでしょう。
このようにライバルが多いことが理由で、ニッチでライバルの少ない市場に参入することが魅力的であるかのように感じることもあります。
既に多くの顧客がいる市場であればライバルも多数いることが普通ですし、ライバルの少ない市場は顧客も少ないものです。もちろん潜在的顧客は多いが、競合
他社はその市場に気づいていないという市場があれば最高ですが、そのような金の卵に巡りあえることは滅多になく、通常は顧客も多いがライバルも多い市場
か、ライバルはいないが顧客もほとんどいない市場かの選択を迫られることになります。
基本的には、市場の顧客数を、その市場に参入している会社の数で割った数が、平均的に売上を見込める量になります。複数の会社が参入している市場は、基本
的に安定した売上が見込めることが多いです。稀に複数の会社が参入しているが、どの会社も売上で苦戦しているという市場がありますが、このような市場は競
合過多にあると言えます。
一社だけしか参入していない市場なら、その会社の売上などをよく調べる必要がありますが、基本的には売上としてはそれほどでもない場合が多いです。
どのような会社も全く参入していないような市場は、顧客も実際には存在していないことが多いです。また新規に参入する場合でも売上の予想が全くできない場
合が多いですので、新しく会社を立ち上げての事業や、会社のリソースの大部分を投入しての参入は危険なことが多いです。あくまでも失敗しても損失を許容で
きる範囲の中での小規模な参入から始め、その後徐々に市場を広げていくことを考える方が良いでしょう。
コンセプトの差別化
コンセプトの差別化とは、今までに全く無いコンセプトの提示と誤解されることも多々ありますが、実際には今までに存在するコンセプトの別方面からの
アプローチである場合が多いです。
たとえば「家族で旅行に行くのに良い車」であれば、多人数が乗れる車というコンセプトで提示している会社が多い中で、「乗り心地が良いので子供が乗っても
安心」というコンセプトで参入するとすれば、同じ「家族向け」というコンセプトではありますが、そのアプローチは異なるわけで、これはコンセプトの差別化
と呼ぶことができます。
コンセプトの差別化は、特に新規参入する時には新規に顧客を獲得しやすいですが、コンセプトの差別化ばかりに気を取られると、やはり顧客層の少ない商品を
出すことにもなってしまいかねません。
たとえば同じ家族向けの車というコンセプトであるとしても、子供が車内で勉強できるような車というコンセプトの車はあまり売れないでしょう。そもそも子供
に勉強させるのなら、車でどこかに出かけるよりも家にいた方が良いからです。わざわざ車に乗っている時に子供に勉強をさせたいと考える人は少ないでしょう
から、売上もそれに応じて低迷します。
コンセプトの選択
さてこのような状況の中で商品のコンセプトを選択する必要がありますが、その時にどのような点を重視すべきなのでしょうか。
市場としての魅力が互角なのであれば、自社の技術力の事情を優先して考慮することが大切です。
たとえばスポーツカーというコンセプトの車を開発したいとしても、スポーツカーであるならアクセルを踏んだ時の加速力が重要になるでしょう。そうであるな
ら、高出力のエンジンを作れるかどうかという点がその会社にとってマーケティング的に魅力のある市場かどうかという分かれ道になります。もしもそこまで加
速力の良いエンジンを作ることができない会社であれば、魅力のあるスポーツカーを作ることは難しく、したがって売上も期待できないでしょう。逆に他社より
も性能の良いエンジンを作れる会社であれば、スポーツカー市場に参入した時に、ライバル他社よりも多くの顧客を惹きつけることができ、売上でも優位を保て
るでしょう。
また家族連れの車というコンセプトの車であれば、独身の人しかいない開発チームよりも、既婚で子供もいる人が多い人の方が、家族でドライブに行く時にどの
ような機能が欲しいかという点に敏感になるでしょう。そして多くの家族連れの人が、このような機能が欲しいと思えるような車を作ることができれば、同じよ
うな車を作っている他社よりも高い売上を見込めるようになるでしょう。
このようにマーケティングとはマーケティング単体で完結するものではなく、自社の技術力や商品企画力を見た上で考えるべきなのです。
既存の商品に異なるコンセプトを与える
マーケティング的に言えば、コンセプトを考えた上でそのコンセプトに沿った商品を作ることが正道ですが、場合によっては今まで販売していて売上が低
迷してきた商品に、今までとは異なるコンセプトを与えることがあります。
教科書的なマーケティングでは邪道に属しますが、ビジネスの実務の上ではしばしば使う方法です。見込み違いで商品在庫の山を作ることもよくありますし、そ
の商品在庫をゴミとして破棄してしまえば損が増えるばかりです。もしも既存の商品をわずかな手間で全く異なるコンセプトを与えることができ、それによって
売上の回復が見込めるのであれば、そのような方法を模索する必要も出てきます。
マーケティングの教科書として著名な本『エスキモーに氷を売る』では、試合で負けてばかりの野球チームを、それまでの「試合で勝利をつかむチーム」という
コンセプトではなく、「勝敗に関係なく、家族連れなどで試合を楽しむことができるチーム」というコンセプトの変更をはかったところ、観客動員数を回復させ
ることができたという事例が紹介されています。
このように、同じ商品でも切り口を変えることによって異なるコンセプトを提示すれば、それによって売上が変わるようになります。










